30人が本棚に入れています
本棚に追加
―――――
初春飾利は、んんーっと背伸びした。
流石に数時間デスクに向かいっぱなしはきついですねー、と言って立ち上がる。
風紀委員第177支部のオフィスは、初春の学校の一部にあたる。
20畳ほどの広さに、応接セットやいくつかのデスクが置いてあり、生徒が使うには中々の設備が整っている。
初春は、風紀委員になって早一年。今では、立派な先輩と言う訳だ。
ココアのパックの封を切り、鼻歌混じりにマイカップに注ぐ。
甘いものが大好きな彼女は、意気揚々として、頭の花もいつもより爛々としていた。
「それにしても…白井さん遅いですね…」
『すぐ戻りますわ』と言って切れたのが一時間前。もう7時を回り、だいぶたっていた。
カップにお湯をジャボーと流しつつ、
「御坂さんの貞操を危ぶんでいたりしてー」
冗談で言ったつもりだが、脳内がそのインパクトで汚染されかけてしまい、ブンブンと頭を振る初春だった。
ココアを淹れたら、一番奥にある自分のデスクに向かった。
彼女のデスクは、サーバーがいくつも置いてあり、机上はそれだけでいっぱいだ。
すずーっとココアをすすって、ほぅとため息をついた。
「私にもくださいな」
突然背後から声が聞こえて、初春はビクッとなり、手に持ったカップをあたふたと取り落としかけた。
振り向いて見たら、
「な、なんだ白井さんですか…驚かさないでくださいよ」
ツインテールの彼女は、腰に手をあてていた。
「まったく…今まで事件現場周辺で聞き込みをしていたのに、初春は一服してるのですもの…」
「私だって、白井さんが帰ってくるって言うからその間、調べていたんですよ?」
「嘘おっしゃい。ちょくちょくココアを飲んでいらしたのはお見通しですのよ?」
そう言って、ゴミ箱の中にある空のココアのパックを指差した。
流石にバレたとなると、あはははー…と笑うしかない初春だった。
.
最初のコメントを投稿しよう!