ある日の空間移動

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――――― 初春飾利は、んんーっと背伸びした。 流石に数時間デスクに向かいっぱなしはきついですねー、と言って立ち上がる。 風紀委員第177支部のオフィスは、初春の学校の一部にあたる。 20畳ほどの広さに、応接セットやいくつかのデスクが置いてあり、生徒が使うには中々の設備が整っている。 初春は、風紀委員になって早一年。今では、立派な先輩と言う訳だ。 ココアのパックの封を切り、鼻歌混じりにマイカップに注ぐ。 甘いものが大好きな彼女は、意気揚々として、頭の花もいつもより爛々としていた。 「それにしても…白井さん遅いですね…」 『すぐ戻りますわ』と言って切れたのが一時間前。もう7時を回り、だいぶたっていた。 カップにお湯をジャボーと流しつつ、 「御坂さんの貞操を危ぶんでいたりしてー」 冗談で言ったつもりだが、脳内がそのインパクトで汚染されかけてしまい、ブンブンと頭を振る初春だった。 ココアを淹れたら、一番奥にある自分のデスクに向かった。 彼女のデスクは、サーバーがいくつも置いてあり、机上はそれだけでいっぱいだ。 すずーっとココアをすすって、ほぅとため息をついた。 「私にもくださいな」 突然背後から声が聞こえて、初春はビクッとなり、手に持ったカップをあたふたと取り落としかけた。 振り向いて見たら、 「な、なんだ白井さんですか…驚かさないでくださいよ」 ツインテールの彼女は、腰に手をあてていた。 「まったく…今まで事件現場周辺で聞き込みをしていたのに、初春は一服してるのですもの…」 「私だって、白井さんが帰ってくるって言うからその間、調べていたんですよ?」 「嘘おっしゃい。ちょくちょくココアを飲んでいらしたのはお見通しですのよ?」 そう言って、ゴミ箱の中にある空のココアのパックを指差した。 流石にバレたとなると、あはははー…と笑うしかない初春だった。 .
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