1943年

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 戦争は長く続きすぎていた。  初め、冬が来るまでに戦争は終わるだろうと戦争指導者たちは大見得切って言っていたが、敵国――戦争指導者たちの言うところの社会主義者たちの連邦の首都直前で足止めを食らった後、戦線は膠着し、2度の冬が過ぎ、3度目の冬が戦線に到来していた。  戦争は長く続きすぎていた。  戦線が膠着し、兵たちは希望を失い戦争指導者の言うところの正義――もっともらしい大義名分――を信じなくなっていた。それどころか、兵たちはそれを忘れてしまっていた。  長く続きすぎた戦争は兵たちを疲れさせ、希望を奪い去った。  三度目の冬は厳しさを増し、凍てつく風は兵たちの防寒具を容易く貫き、露出した部分に当たる吹雪は呼吸を困難にした。  兵たちは疲れていた。長く続きすぎた理不尽な戦争に。理不尽な暴力に。もはや、彼らは生ける屍となっていた。  冬の凍てつく寒さと飢えは兵たちに苦痛を与え、苦痛は苛立ちに、苛立ちは怒りに、怒りは憎しみへと変化し、兵たちを冷酷な殺戮マシーンへと変えていった。
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