壱ノ巻 始まり

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「えーと、何々……『武将召喚争奪戦』?」 全く耳慣れない言葉がそこにはあって、更にあり得ないような説明が書かれてあった。 「『皆様にはこれから、戦国時代の武将を召喚してもらい、その強さを競いあっていただきます』…って何だよこれ、マジで意味わかんねえ!」 初っぱなから読むのが嫌になってきたが、一応最後まで読む。 「『お使いの携帯を媒介とし、GPS機能で位置を指定、情報を衛星に送信し特殊光線を照射します。光線に人体への影響はありません。』」 更に読み進める。 「『NA〇Aもビックリな技術で戦国武将を呼び出します。召喚に成功した武将は、貴方のことを主(マスター)とし、力になってくれます。武将は最大五人まで仲間になります。皆様思い思いの軍を作ってください』………はあ」 現実味が無さすぎて溜め息が出てしまった。 もうこれ何の嫌がらせだよ……と心底渋りながらも読んでいく。どうやら長ったらしい説明はそろそろ終わりのようだ。 「…んと、『このイベントの目的は、最強の武将マスターを決めるだけではなく、その時代に纏わる秘宝を集めていただくこともあります。寧ろ、皆様にとってはこちらの方が要になるでしょう』……ふーん」 元から興味が無いので、適当に受け流す。 「『秘宝はシリーズごとに六つあり、このページにアクセスしていただいた時点で一つ保有していることになっています。その全ての秘宝を集めた時、晴れてその秘宝をコンプリートしたことになります。秘宝コンプの際の報酬は、【貴方の願いを一つ叶える】です』―って、はあ!?」 最後の最後で衝撃が走った。 が、すぐに冷静になって考えてみる。 「(落ち着け……よく考えろ。 仮にこれが本当だとしたらどうなる? このイベントに参加する人達は、秘宝を奪いに来るだろう。それもかなりの高確率で)」 既に一つ保有しているのだとしたら、何時何処から奪いに来られるか分からない。 一抹の不安を覚えながら、説明の最後の段落を読む。 「『秘宝は合戦で奪うことも出来れば、人から貰うことも可能です。なお、合戦の際に生じた事象は、当社は一切責任をとりません。悪しからず。それでは御武運を祈ります』」 「………………」 しばしの間、黙考する。 何度も考え直した結果、一つの結論に至った。 「――っふざけんじゃねええぇぇぇっ!!」 俺の叫び声は虚しく夏の夕焼け空に消えていった。
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