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~奈々子と黒澤~
「私ね…、黒澤刑事とよく連絡取り合ってたの。
おじさんの事件の犯人が捕まった頃くらいから。」
「…奈々子が黒澤と!?」
「うん、電話とかメールとか…、たまに2人で会ったりもしてた。
けど、黒澤刑事が話すことといえば、“友香里は元気か?”とか、
“また危険な事に首を突っ込んでないか?”とか。」
…そういえば、黒澤が言っていたな。
私は1人で暴走するから、放っておけないって。
奈々子に私の近況を聞いてたのか、黒澤の奴…。
「そう…、ほかに何か言ってた?
奈々子が、“黒澤は私に気がある”って思えるような話。」
「友香里の事、私に色々聞いてたよ。
好きな食べ物、好きな動物、趣味、学校での事、昔の事、おじさんとの事。」
まるでストーカーか取り調べみたいだな…。
「すぐ分かったよ、黒澤刑事は友香里の事が気になってるって。
けど、年が違いすぎて何も言えないっていう、葛藤みたいなのも分かった。」
まぁ、私と黒澤の年齢差を考えればそうなるだろな…、年齢知らないけど。
でも多分、黒澤が私に手を出せば、捕まるくらいの年齢差はあると思う。
「だけど、黒澤から聞いたわけじゃないんでしょう?
あいつの事だから、ただのお節介かもしれないじゃない?」
私がそう言うと、奈々子は急に私に近付き、目の前で正座した。
「…あのね、これが私の勘違いだったら、それはそれでいいの。
けどね友香里…、もし、そうじゃなかったら…、」
「そうじゃ…、なかったら?」
「それは、黒澤刑事の“覚悟”なの。
もし、好きな人とたとえ義理でも、兄妹になってしまったら、
想いを伝える事が出来なくなってしまうんだよ?
それはとても辛い事…。
自分から言い出したりはしたくない。
けど黒澤刑事は、自分の想いより友香里の将来を優先したら、
それが1番だと考えたから、その覚悟が出来たんだと思うの。
だから友香里も…、曖昧な気持ちで答えちゃ駄目だよ?」
…これは“黒澤が私の事を好き”だったらの話だ。
有り得ないとは思うけど、黒澤の態度を思い返してみたら簡単に一蹴は出来ない。
だとしたら…、いや、だからこそ…、私の答えは確固たるものになるんだ。
了
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