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~作戦~
9月10日、午前8時、いつもの待ち合わせ場所。
「そういう事なら、この名探偵に任せな~さい!!」
私は奈々子に、黒澤から聞いた推理と、私が考えた作戦を伝えた。
…っていうか、“名探偵”は関係無いし。
同日の昼休み、1年3組の教室…。
「ねぇ~!!野島って奴いる~!?」
奈々子が大きな声で叫ぶと、1人の男子生徒が立ち上がり、近付いて来た。
ちなみに…、私は影で様子を伺っている。
「何…、僕に何か用?」
「あんたが…、野島文成?」
「あぁ、そうだけど…、何の用?」
彼が野島か…、意外に整った顔立ちをしてるなぁ。
「あんたさぁ、友香里に付きまとうのやめてくんない?
一緒にいる私の方が気持ち悪くなるんですけどぉ?」
「な…!?意味が分からない!!何を言ってるのか…、」
よし、この反応はビンゴだ…!!
自分で言うのはちょっと恥ずかしいが…、私に気がある事は間違いない。
少なくとも、下の名前だけで、誰の事を言ってるのか分かってる…。
普通、1年生が他のクラスの、異性の下の名前なんて知ってるはずがない。
「とぼけんなよ変態、超~キモいんですけど?
もう二度と友香里に近づくなよ?このストーカー野郎が。
もし次に見かけたらマジで警察呼ぶから…、覚えときな?」
奈々子が野島に背を向け、私の方へと帰ってくる。
っていうか奈々子…、あんた演技上手すぎ。
「く…!!」
普通、ここは言い返すところのはず…、やっぱり私の読み通りだ。
ここまで言われても言い返さないのは、非がある事を認めている証拠…!!
「あっ…!!ねぇねぇ、友香里~!!」
「え…、どうしたの奈々子?」
「今日ね、放課後は先に帰っててくれないかな?ちょっと野暮用でね?」
「そっか~、じゃあしょうがないね、分かったよ。」
「友香里、本当にごめんね~?」
…一瞬だけ、気付かれないように野島の方を見る。
私たちの話をこっそりと聞いているようだ…。
私の作戦通りに…。
了
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