~確保~

1/1
前へ
/10ページ
次へ

~確保~

同日、16時、放課後の屋上。 奈々子が1人、柵に寄り掛かり、ぼんやりとグラウンドを見下ろしている。 …後ろから近付いてくる人物に気が付いていないようだ。 その人物は足音を殺し、ゆっくりと奈々子に歩み寄り、そして…、 「きゃ…!!」 奈々子を、力の限りに突き飛ばす。 「残念でした。 どんなに頑張ったって落ちないよ?」 私がそう言うと、彼は驚いたように後ろを振り返る。 「え…、榎本…!?」 「ベルトとロープでしっかりと固定してあるからね? あなたみたいなもやしっ子には、絶対無理だよ…、野島クン?」 「な…、何の事だい…?僕は…、」 言い訳をしようとする野島に、囮役の奈々子が爆発する。 「おいコラボケ!!人を突き飛ばしといて何の事じゃねぇだろ!? 本気で死ぬぞ!?この高さ!!分かってんのか、おい!!」 「奈々子…、それも演技…?」 いや、目がマジだ…、そっとしておいた方がよさそうだ…。 私は野島に近付き、彼の持っていた鞄を引っ手繰る。 「お…、おい!!何をするんだ!?…っ放せ!!」 奈々子ががっちりと野島を抑えている、これも打ち合わせ済みだ。 まずは野島を挑発し、奈々子が放課後に1人になる事を聞かせる。 そして放課後、私が先に屋上で柵にロープで仕込みをして待機、 野島に奈々子を屋上まで尾行させ、その後は奈々子自身に、柵に固定してもらう。 放課後なら、鞄を持って付いて来るはず。 そして、黒澤の言うような犯人なら…!! 「あったよ、奈々子!!私のお箸!!」 そういう奴らは、“常に戦利品を持ち歩いている”可能性が高い…!! 「そ…、それは僕の…、妹のだ!!今日間違って持ってきたんだ!!」 「それを証明する事は出来る…?私は出来るけど? アンタみたいな奴って、こういうの洗わないらしいねぇ? 鑑識とかに調べてもらえば、私の唾液が出てくるんじゃない? ねぇ、野島君…? それから、黒澤刑事。」 「あぁ、よほど丹念に洗わない限り、出てくるはずだ。」 「け…、警察…!?本物の!?」 了
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加