1人が本棚に入れています
本棚に追加
~確保~
同日、16時、放課後の屋上。
奈々子が1人、柵に寄り掛かり、ぼんやりとグラウンドを見下ろしている。
…後ろから近付いてくる人物に気が付いていないようだ。
その人物は足音を殺し、ゆっくりと奈々子に歩み寄り、そして…、
「きゃ…!!」
奈々子を、力の限りに突き飛ばす。
「残念でした。
どんなに頑張ったって落ちないよ?」
私がそう言うと、彼は驚いたように後ろを振り返る。
「え…、榎本…!?」
「ベルトとロープでしっかりと固定してあるからね?
あなたみたいなもやしっ子には、絶対無理だよ…、野島クン?」
「な…、何の事だい…?僕は…、」
言い訳をしようとする野島に、囮役の奈々子が爆発する。
「おいコラボケ!!人を突き飛ばしといて何の事じゃねぇだろ!?
本気で死ぬぞ!?この高さ!!分かってんのか、おい!!」
「奈々子…、それも演技…?」
いや、目がマジだ…、そっとしておいた方がよさそうだ…。
私は野島に近付き、彼の持っていた鞄を引っ手繰る。
「お…、おい!!何をするんだ!?…っ放せ!!」
奈々子ががっちりと野島を抑えている、これも打ち合わせ済みだ。
まずは野島を挑発し、奈々子が放課後に1人になる事を聞かせる。
そして放課後、私が先に屋上で柵にロープで仕込みをして待機、
野島に奈々子を屋上まで尾行させ、その後は奈々子自身に、柵に固定してもらう。
放課後なら、鞄を持って付いて来るはず。
そして、黒澤の言うような犯人なら…!!
「あったよ、奈々子!!私のお箸!!」
そういう奴らは、“常に戦利品を持ち歩いている”可能性が高い…!!
「そ…、それは僕の…、妹のだ!!今日間違って持ってきたんだ!!」
「それを証明する事は出来る…?私は出来るけど?
アンタみたいな奴って、こういうの洗わないらしいねぇ?
鑑識とかに調べてもらえば、私の唾液が出てくるんじゃない?
ねぇ、野島君…?
それから、黒澤刑事。」
「あぁ、よほど丹念に洗わない限り、出てくるはずだ。」
「け…、警察…!?本物の!?」
了
最初のコメントを投稿しよう!