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~消させぬ罪~
「警視庁の黒澤だ。
そいつらに頼まれてここで待ってたが…、
“窃盗”の前に“殺人未遂”の現行犯、もう逃げれんぞ…、下衆野郎。」
そもそも、奈々子が鬼の形相でがっちり掴んでるからなぁ…。
「…待って黒澤、奈々子も…、もう放して?」
私の言葉に、3人とも呆気に取られたような表情を見せている。
だが、奈々子は何も言わずに私の顔を見て、すぐに野島を解放した。
「どういうつもりだ榎本の娘?奴はお前の…、」
「野島文成くん…、正直に答えて…?
先月、奈々子とぶつかって転落させたのは、事故…?それともわざと…?」
野島は膝を突き、俯いたまま何も答えないのを、見かねた黒澤が声を掛ける。
「…おい小娘、こういう奴の話は聞かん方がいいぞ?」
「あんたは黙ってて…。
どうなの…?野島くん。」
きつい言い方をしてしまったけど、黒澤は何も言わず黙っててくれた。
しばらくして…、野島がようやく、口を開いた。
「…落とすつもりは、ありませんでした。
ただ…、ちょっとぶつかって…、怪我でもさせてやろうと…。」
野島の答えを聞き…、私は奈々子の方を向いて、質問する。
「奈々子、アンタはこいつを許せる?」
「…先月の事は、お互いにとって不幸な事故だったと思って水に流した。
けど…、また同じ事を繰り返そうとしたこいつを、私は絶対に許さない。」
奈々子の言葉を聞いて、未だ俯いている野島を見下ろし、質問する。
「野島…、あなたはどう責任取るつもり?」
「僕は…、どうすれば…、いいでしょうか…?」
私は、じっと野島の方を見つめたまま、今度は黒澤に問う。
「黒澤…、彼の罪は?」
「傷害、窃盗、殺人未遂…、分かっているだけならこんなところか。」
「…これらの罪を償う方法は?」
「そんな幼稚園児でも分かるような事を、今更高校生に教える気は無い。」
黒澤の言葉が届いたのを確認して、私はもう1度、野島に同じ質問をした。
「…野島くん、あなたはどう責任取るつもり?」
「…僕、警察に…、行きます。」
「野島くん…、私は大切な親友を傷つけたあなたを、一生、絶対に許さない。
そして、あなたが罪を償っても、あなたの罪は絶対に消えない、消させない。
その罪に、一生囚われて生きなさい。
それが…、私があなたに望む償い方だよ。」
了
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