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~良き出会い~
「全く、面倒な奴だな、お前は…。」
「友香里、最初から彼に自首させたかったんでしょ?」
同日、17時、学校付近の喫茶店。
私たちは野島を開放し、黒澤の奢りでお茶にする事になった。
「ちゃんと、彼が自分の罪を償ってくれればいいけどね…。」
信じるしかない、彼が自分の意思で罪を償う事を選択すると…。
「友香里って、いつからそんなににお人好しなったの?」
「こいつの性格は、筋金入りのお人よしだった父親譲りだろうな。
もしかすると、榎本も生きていれば同じ事をしたかもしれん。」
「“お父さんと同じ事を”か…、よかった。」
父は私の目標だから、父を良く知る黒澤にそう言ってもらえると、何だか嬉しい。
「ありがとう、本当に感謝してるよ?黒澤刑事。」
「本当に感謝してる奴は、人を呼び出しといて“黙れ”なんて言わない。」
…あぁ、やっぱり気にしてたか。
「という事は…、この前に友香里が電話してた相手って、黒澤刑事?」
「いやいや…、あれは大神崎っていう怪しい人だよ。」
「お前…、まだあの男と会ってたのか?」
「別に、私の勝手でしょ?何でそんなに気にするかな…。」
こいつは、まだ件の事を嫌ってるのか…?しつこい奴だな。
「なになに!?友香里を巡って恋の三角関係!?」
「…そろそろ暗くなってきたな、車に行って待ってろ…、送ってやる。」
私の方を見てそう言ったので恐らく、話があるってことだろう。
黒澤が会計を済ませている間に、私たちは外に出た。
この蒸し暑い8月の空が、そんなに早く暗くなる訳無いじゃん。
まぁ、奈々子だから気にしないだろうけど…。
「ねぇ、友香里に聞きたい事があるんだけど…。」
「どうしたの奈々子?急に改まって…。」
奈々子がじっと私の目を覗き込んで来る。
「友香里…、好きな人いるの?」
「…はぁ~、何かと思えばそんな事か。」
「あのね、私は真面目に聞いてるんだよ?
静岡から帰ってきてくらいから、友香里の雰囲気が急に変わったから。
…何か、いい出会いでもあったのかなぁ、と思って。」
いい出会いか…、まぁ、一応“いい出会い”ではあるかな?
了
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