~見えぬ道~

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~見えぬ道~

9月11日、17時、自宅リビング。 1人で考えるとは言ったものの、ちっとも頭が回らない。 私は、自宅に奈々子を呼び、相談してみることにした。 「ありがとうね、奈々子。」 奈々子は父の仏壇の前で手を合わせていた。 「…友香里のお父さんなら、何て言うかな?」 父の遺影をぼんやりと眺めながら、奈々子が呟いた。 「友人といっても、どんな関係だったかは聞いてないから、 正直、見当もつかない…、かな。」 黒澤と父…、2人がどんな関係だったのかは、想像し難い。 「私は、いいと思うよ?黒澤刑事の話…。 1人で暮らしていくのは…、あまりいい事だとは思えないもん。」 「それは…、私だって分かってる。 黒澤がいい奴で、実は私も…、そんなに嫌いじゃないって事も…。」 “件を誤認逮捕した刑事”だから、むきになってただけかもしれない。 友人の死に関係があるかも知れない人が目の前にいたら…、 私だって、冷静さを欠いて同じ事をしたかもしれない。 現に…、件を信頼してるって思っていた私も、あの時は少し疑ったくらいだ。 あの時点では、ほとんど件が犯人で決まっていたようなものだったから。 「冷たいようだけど、私にはそれしか言えない。 黒澤刑事がどんな人なのかよく分からないし、 友香里と黒澤刑事がどんな関係かも、分からないから…。」 …この話は、黒澤には利点は一切無く、ただ面倒が増えるだけだ。 けど、私にとっては…、とてもいい話なんだ。 家族が増える、今まで通りここで暮らせる、 黒澤との生活も…、実は悪くないかも、とも思ってる。 「もう1つ、私に言える確かな事は…、」 奈々子が、私の方に振り返って言った。 「黒澤刑事が、本当に友香里の事を思ってるって事。 それは、昨日の黒澤刑事を見てたらはっきり分かった。 きっと、黒澤刑事は友香里の事が本当に好きなんだよ。 だけど、友香里はまだ若いから、気持ちを押し付けたくないと思って…、」 「好きって奈々子…、またそんな事言ってるの?」 「あのね友香里…、今から私が言う事、黒澤刑事には内緒だよ?」 了
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