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~一般的異常者~
「…ある日、1人の女が男に殺害された。
その犯人と女は顔見知りでも何でもない、赤の他人だった。」
「…通り魔か何かって事?それ、お箸泥棒と何か関係ある?」
「いいから、黙って聞いてろ。
…その男が捕まった経緯は、以前にも被害者を襲った事があったから。
実際は少し違うが、まぁ、似たようなものだ。
後日、その男の家をガサ入れしたら、女性の下着が数着、発見された。」
「それって、被害者のストーカーだったって事…?」
「いや、その下着は被害者の物ではなかった。」
「それで…、え?何で被害者のじゃないって分かったの?
被害者の家族に聞いたとか?」
「いや、被害者は…、ついでに犯人も1人暮らしだ。
一緒に住んでない限り、下着の種類など分かるまい。」
「だったら…、どうして?」
「被害者と親しかった友人が言ったんだ。
犯人が所持していた下着は全て、“自分が盗られた物”だと…。」
「訳が分からない…、犯人が殺したのは下着を盗んだ相手の友人で…?」
「つまり、こういう事だ…。
犯人は被害者の友人に下着泥棒やストーカー行為を働いていた。
その男曰く、“彼女とお近づきになるのに、あの女が邪魔だったから。”
犯人の狙いは初めから“友人の方”だったんだ。
だが、いつもその友人と一緒にいる被害者の女が目障りだった。
恐らく、邪魔されていると思っていたのかも知れんな。
だから、狙った女性の友人である“被害者”を殺害したんだ。」
「成程…、確かに相手に声を掛ける時は、誰もいないほうが声を掛けやすい…。
けどそれなら、1人になった時に声を掛ければよかったんじゃないの?」
「犯人が“そういう奴”だったって事だ…。
その女が1人でいる時に声を掛ける勇気は無いくせに、
友人がいる時はそいつが邪魔をしていると錯覚する…。
ストーカーなんかにはよくある、いわゆる被害妄想の一種だ。
奴らに常識は通用しない、基本的に異常者揃いだ。
たとえ普段がまともであったとしても、犯行時には総じて異常者と化す。
一般的な人間は、常識で行動し、相手も正常であると思うからこそ、
その異常者の行動を理解出来んし、推理が難しくなるんだ。」
了
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