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「はぁっ、はぁっ…」
常夜の世界。辺りを照らす赤く燃え上がる炎。鳴り止まない警報。轟く銃声と爆発音。迫り来る機械音。少年はそれらを背に走っていた。逃げられる場所など無かった。それでも少年は走った。
「覇者が敗走するなんて、滑稽な話だよね。」
少年をあざ笑うかのような声に振り返る。顔は逆光で見えない。だが、そいつがこの状況をつくりだした張本人であること、「敵」であること、そしてかつての「兄弟」であり「親友」でもある人物であること、それだけは理解できた。
「どういうつもりだ?!」
少年は腰に挿した刀に手を伸ばす。そして警戒しながら問いかける。
「神の裁きを下した。…とでも言うべきかな?まだ始まってもいないけどね。」
「神の…裁き…。」
威圧感のあるその言葉に少年は立ちすくんでしまう。
「そうさ。君にはその始まりの種になって欲しい。」
「嫌だと言ったらどうする?」
少年は刀を抜き、斬りかかる。
「無駄だよ。だって…、」
『カンッ』という金属がぶつかり合う音が響くその瞬間、少年は刀もろとも吹き飛ばされてしまった。そして『バシャン』という音をたてて水に落ちた。
「だって、僕…かみ………だ…ら。」
少年の意識はそこで途切れた。
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