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僕は急いで姉を追いかけた。
「ねえちゃんが、ねえちゃんが!」
叫んでるつもりなのに、誰も振り向かない。
誰もこの状況を理解しようとしない。
僕はなかなか進まない水の中を抜け出し、川沿いの土手を走る。
だけど水を含んだ靴が重くて、思うように追い付けない。
僕の足はスローモーションのように遅かった。
そのうち誰かがこの状況に気がついて、その場にいた子供達が野次馬のように遠目から僕と姉を見ている。
「網、網!」
と、叫び声が聞こえたとき、
川の中を転がる姉の身体が浅瀬に乗り上げ、
―――止まった。
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