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「おっはよー!」
朝から、僕はびっくりした。
いつもは自力で起きる朝8時。ぼやっとした視界に映ったのは、とびきりの笑顔で笑う女の子だったから。
「えっ!?な……えっ?誰??」
飛び上がって後頭部を壁に打ち付けた。
ゴツン、て漫画みたいな音がして、僕はやっと目を覚ました。
あぁ、彼女は昨日買った、
人型携帯電話だ。
「嘘ーっ、覚えてないの?」
「や、違う、ごめん。寝ぼけてただけです。」
じんじん痛む後頭部を右手で撫でながら、僕は布団を整えた。
何か妙に恥ずかしい朝に、少しどぎまぎしながら。
「朝ごはんとか、やっぱ作った方が良かった?」
「………え?あ、いや大丈夫です。僕作ります。」
「何で敬語よー、昨日言ったじゃん!」
「あ、すみま……ごめん。」
何でこんな焦ってんだ、自分。
汗をかいた手を布団にこすりつけて、僕は顔を上げた。
そこには、両手を腰に当てて笑う、女の子…人型携帯電話が居た。
不思議だ。やっぱり人間にしか見えない。
「あ、やっぱりまだ慣れない?携帯電話に見えないでしょ。」
「あ、ハ……うん。」
「よねー、やっぱね。」
もう笑わないんだ、逆に恥ずかしいわ。
って、僕が自分に笑ってしまった。
そんな僕を見つめる彼女は、やっぱり人間の女の子にしか見えない。可愛いくて、スタイルも良くて、でもちょっとぽっちゃり寄り的な。
一番モテるタイプの、僕に一番関わり無いタイプの女の子。
「じ、ジロジロ見ないでよ…」
「あ、ごめん」
照れくさそうにスカートを引っ張る彼女は、紛れもなく携帯電話だ。
僕の目線の先には、しっぽみたいなコンセントがあった。
そこだけ非人間的で、本当に笑ってしまう。
「あ、コレ?これはね、ただのオブジェだから。」
「え?充電するとこじゃないの?」
「充電は必要ないよ」
「もしかして…飯食うの?」
「んなわけないじゃん!」
そう言って彼女は、僕に頭を下げた。
目を凝らすと、髪の生え際に何か光の様な物が見える。
「ここでね、自家発電してるの。ソーラーパネルでも集められるんだけどね。」
「へー………」
彼女は本当に、
人型携帯電話なんだ。
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