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しまった…。
ベッドで私は頭を抱えた。
一般の人にとって鳥もさえずる爽やかな朝のはずだった。
しかし私にはその鳥が私を馬鹿にしているようにしか聞こえなかった。頭のすぐ横にある目覚まし時計を持ち上げた。
8時30分。確か目覚ましの設定時間は6時30分のはず。
私が起きたのはその2時間後の8時30分。
目覚まし時計が鳴らなかった…と思いたかったが、6時30分に目覚まし時計がきっちり鳴り、私も寝ぼけながらその音を止めた記憶があった。
そう‥つまり要約すると、私は二度寝したのである。
私はベッドから飛び降り、寝間着をベッドに放り投げ予め用意してあったYシャツとスーツを身に着けた。
なんとしてでも鐘が鳴るまでには学校に行かなくては‥。
そう、学校に行くのだ。
軽く自己紹介をさせてもらうと、私は教師の雅山輝(みやびやまてる)、区立の南橋小学校四年一組の担任を勤めている。
それだけに遅刻は絶対に許されない。
私は朝食を諦めて玄関へ向かう。
スマートな先生ならば必ずとも言っていいほど革靴は似合う。
という持論を持っているが、ここは走りやすい運動靴にすることにした。
革靴では本当に学校に間に合わない。
素早く履いた運動靴のかかとはつぶれたままだが構わず私は走り出す。
生徒の姿が見られない(というよりすでに登校済)アスファルトの道を力強く蹴り上げて走る。
汗臭くなっても構わない。
鐘が鳴る前には‥鐘が鳴る前には間に合わないといけない。
「ハァハァ‥」
息切れとともにたどり着いた学校の校門にはまだ生徒がちらほら登校する姿が見えた。
「よかったぁ‥間に合った!」
走りから歩きに変わったその瞬間、額に水滴が浮かび上がった。
汗だ。
その汗をハンカチで拭いながら、職員室へと向かう。
ちなみに私の家から学校まで500メートルとない。
すぐ近くなのだ。
いつもこの距離に私は助けられているのだ。
しかし一方で自転車での登校が禁止されているのは痛い所でもある。
職員室の戸を静かに開け中に入る。
その戸を開けた音で反応した職員室内の数名がこちらに相変わらずの冷ややかな眼差しを向けてくる。
‥まぁ教師のくせに遅刻魔だから仕方ないか。
気まずい雰囲気から逃れたい一心の私は教科書等の最低限のものを手に取り教室をあとにした。
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