運命1

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「何?早く!俺、変質者になりたくないんだけど」 変質者!? 親切なイケメン変質者? フルフルと頭を振り、妄想しそうなのを取り払った。 「すいません。では、お願いします」 私がおぶさったのを確認すると、立ち上がり、コンシェルジュのもとへ歩いていく。 「須羽様、どうかされましたか?」 いつもなら、にこやかにお帰りなさいませと言う口が、今日は、違う言葉を紡ぎ、早口で、マニュアル通りじゃない。 「あ、あの―――」 「この人の靴のかかと、明日までに直してやって」 説明しようとした私を遮り、私を下ろした市ノ瀬さんは、それだけ言うと、じゃあと、軽く挨拶をして背中を向けた。 「ま、待って!」 コンシェルジュが何かを話し始めたが、一切聞かずに、呼び止めたが、市ノ瀬さんは、振り向くことはなかった。
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