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挨拶はしていたけれど、まともに口を利いたのは、初出勤以来。
「あ……りがとうございました」
市ノ瀬さんが、フロアからこちらに現れることは、帰社の時か高田チーフに用事がある時。
だけど今日は……。
「円香が心配していた通りだな。あんまり、円香の手を煩わせてくれるな」
そういうことね。
初日に一緒に出社してきたから、有り得なくはない。
でも、公私混同しない市ノ瀬さんが、円香と呼び捨てにするなんて。
よっぽどの親密な仲じゃないと。
なぜか胸がチクンとする。
まさかね。
そんなはずない。
私を見下ろす市ノ瀬さんをただ見つめ返しただけなのに、トックントックンと少しずつ速くなっていく鼓動は、今した否定を打ち消すものだった。
市ノ瀬さんが……好き?
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