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キリッと顔立ちのいい市ノ瀬さんに睨まれると、絶対命令で、言葉を口にするよりも早く体が動いた。
崩れかけているであろうメイクも直せないまま、市ノ瀬さんのもとに戻ると、外に出ていく。
「あ、れ!?研修は?」
思わずその背中に声をかけた。
うっとうしそうに振り返る市ノ瀬さんは、
「んなもん、俺がするわけないじゃん」
と、追い付いた私の耳元で小声で囁いた。
「ヒャッ!!……あ、あの、すいません。でしたらこれから何処へ?」
耳にかかる息に過剰に反応したのは、不意打ちみたいなものだったからだけど、多分、もう真っ赤。
今が、暗がりでよかった。
「愁善の待ち伏せから、一人で逃げられんの?」
「え!?佐伯さまは帰ったのでは?」
「んなわけあるか!自分の目で確かめて見るんだな」
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