Hotelバージニア

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意識が朦朧としていき、目の前が真っ暗な闇に包まれる。そして突然、自分の身体が左側に引き込まれるような感覚に陥った。かなりのスピードだ。 徐々に意識が薄れていき―― 次に覚えているのは小さな点だった。その遠くに見える小さな点が、だんだんと膨らみを増し強い光となって物凄いスピードで迫ってきた。 ――瞬間、目の前が開けた。 耳に聴こえてくるのは、ゆったりとした異国のメロディー。両足からは高級な絨毯を踏みしめている感触が伝わってくる。 これが本当にゲームの世界? しばらく眺(なが)めていると、ここが高級ホテルのロビーだと気がついた。 カウンター前は人で賑(にぎ)わっている。辺りを見回し、修司や哲二を探したが、見覚えのある顔はない。 年齢や制服からして、日本中の高校生が集まってきているのだろう。 ふいに、欧米風の係員が近づいてきた。やばい、外国語なんて喋れないぞ。 『お客様、ようこそHotelバージニアへ。チェックインはお済みでしょうか? お済みではないようでしたらフロントへご案内致します』 驚くほど流暢な日本語だった。 俺は係員に促(うなが)されるままフロントへと向かう。 『いらっしゃいませ。チェックインのお手続きですね。では、お客様手持ちのPDAをこちらにかざして下さい』 黒いボードの上にPDAをかざすと薄い緑色の光がチカッと光る。 『鷹山 蓮様ですね。あ――ほ、他のチームメイト様は三十分程前に、全員チェックインがお済みのようですね。鷹山様のお部屋は2031号室になります。お部屋の前でPDAをかざすとロック解除になりますので。右手のエレベーターからどうぞ』 一瞬だがフロントの女性が不自然な間をあけたのを俺は見逃さなかった。おそらくチーム名を見たからだろう。 まくし立てるように説明した事がそれを裏付けている。オレは恥ずかしくなり素早くPDAを懐にしまい、その場を離れた。 皆、三十分も前にチェックインが済んでるとはな。同じタイミングで転送されたはずだが転送時間に時差があるようだ。
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