Hotelバージニア

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特に荷物がないので、皆自分の部屋には行かず哲二の部屋に集まっていた。 西条、滝澤に続き部屋に入る。 そこは予想通りの広さで、至るところに豪華な装飾が施されていた。奥に見えるベッドにはグッタリとした修司と哲二が横たわっている。 元気がない理由は、容易(ようい)に想像がつく。 俺に気がついた修司が身を起こす。 「おせーぞ、蓮!」 俺は意地悪(いじわる)そうな笑みを浮かべた。 「悪い、悪い、大変だったなぁ」 「顔が笑ってるぞ。テメー……」 「いやいやだってさ、こんなに時差があるとは思わないじゃん。まっ、とりあえずご愁傷様(しゅうしょうさま)」 西条の苛立ちの捌(は)け口にされていたであろう、修司と軽口を叩きながら、二人と同じようにオレもベッドに身を投げ出す。 家の布団とは比べものにならない弾力と羽毛の心地良さが伝わる。現実とゲームの世界。その境を本当に超えてきたのか実感がわかない。 西条と滝澤は窓際の椅子に座って紅茶をいれている。 俺は横になりながらPDAをいじる哲二に話かけた。 「PDAどうかな。使いやすい? オレ機械音痴だから多機能過ぎても逆に不安だな」 哲二は身を起して、眼鏡を直す。 「これ凄いよ。当然、多機能だし、この小ささで僕のパソコンより性能もいいよ。でも、さっきからゲームヘルプ機能で、ゲーム内容を探ってみたけど、開始までやっぱり駄目みたいだね」 さすが哲二、やることが早いな。 修司には剣の才能、哲二には頭の回転の速さがある。そんな才能ある二人に寂しさを覚える時がある。 親友達と比べ何もない自分がいつも心の片隅にいた。
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