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顔を上げた際に、ズレた眼鏡を直しながら哲二は言った。
「職業だよ、職業!」
「来週、日本中の高校生を対象にしたゲームの先行公開があるでしょ。噂じゃ職業を1000種類以上から選べるらしい」
素早く反応したのは修司だ。
「――マジか!? 覗き魔とかオッパイ星人とかになれるのか?」
例え10000種類以上の職業が選べたとしても、そんな職業は存在しないだろう。二人で修司を無視し、会話を続けた。
「でもさ哲二、どんな職業があるかまでは分からないんだろ? 今から考えても……」
オレの発言にかぶせ気味で哲二は答えた。
「駄目駄目! 運動神経抜群な修司や蓮と違って、僕は戦いとかに自信がないんだよ、本番まで万全を期さないと」
「オレは別に運動神経ないだろ」
「相変わらず固てぇなー。人生と女はなるようにしかならねーんだぞ」
人生とか女とかは意味不明だが、修司の言い分にも一理ある。
「二人とも甘い。世界初の転送を利用したゲームだよ。ネットじゃ変な話や、悪い噂ばかりだ。だいたい、日本中の高校生を対象に先行公開っておかしくないか?」
「そう言われれば確かにそうだな。学校も全面的に協力してるのも変だし、転送の安全性も疑問だって、ほらこの新聞にも書いてある」
オレは新聞紙をテーブルに広げた。
「嗚呼、もう! 難しい話はやめてどっかいこうぜっ!」
「ゲームの話が難しいのか修司」
唖然(あぜん)とした顔で哲二は呟いた。わかる。わかるぞ哲二。
結局、修司の強い希望もありその日はカラオケBOXで一日を過ごした。
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