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幸い団隊長は動いていない。
地面に出現させた複数の氷の刃がパト隊長の足をかすめバランスを崩させた。
――今だっ!
右の手の平に浮かせていた炎の球を撃ち込んだ。
回避不可と判断したのか、パト隊長は手にするレイピアでその球を斬り裂こうとしたが、炎の球の勢いは強く吹き飛ばした。
業火に包まれるパト隊長。
生死の確認など出来る暇もなく、団隊長に向き直る。
『…………。』
言葉も発せず、その場を動かない大きな楯を構えたままの団隊長。
右手で上空の短剣を操り団隊長の頭上に。
動いたら一気にやられるかもしれない。
蝙蝠ちゃん、守ってね。
対峙して数十秒。
パト隊長が焼けていく音がバチバチと聞こえる。
ど、どうしたんだろ……。
何で動かないの?
それにパト隊長もスキルを使わないし、弱かったような気がする。
――もしかして!
私は二人のスキルを知らない。団隊長に関しては戦っている姿すら見た事が無い。
パト隊長も、岡ザルと戦った後だからよく覚えていないよ。
そういうことなのね。
安心した私は右手を下ろし、上空の短剣を全て団隊長へと降り注いだ。
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