柚葉 Vs 

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目の前に立っているのはシャーちゃんの偽者だ。 特徴的な赤い装備、右肩に掛けているのは虹色の傘。 三角錐の帽子の下には無表情な顔が。 この人を間違う訳ないよ。 戦い方もスキルもつい先日嫌っていうほど知ってしまった。 ありったけのオーラを魔王くんに注ぐ。 ポシェットを探るが緊急回避のベルはない。 死ぬ……。 本能なのかやけになったのか、私は目茶苦茶にスキルを発動した。 【ブラック・レイン】発動。 【炎球】発動。 【氷柱】発動。 炎の球は手にする傘で弾かれ、氷の刃は左の拳で破壊されてしまった。 【炎球】発動。 【氷柱】発動。 私が繰り出す球も柱も、まるでおもちゃで出来ているかのように軽々と破壊しながら近づいて来る。 私をかばうように魔王くんがシャーちゃんに立ちふさがった。 『……面白いですね』 打ち合う二人。 魔王くんの一撃を傘で受けるシャーちゃんは必死そうだ。 そうか、傘だったらまだいける。数珠丸じゃないんだ。 一握りの希望だって見逃さないっ! 「魔王くん、シャーちゃんは数珠丸を出していないから一気に攻めて!」 叫びながら右手で上空の短剣を落とすタイミングを伺う。 【ブラック・ボックス】発動。 距離を取ったシャーちゃんの横には黒い空間が出現。 その空間に手を入れ、何かを取り出した。 よ、余計な事言っちゃったかも。 出てきたのは見たことがない形のサーベルだった。 ――あれ、数珠丸じゃない。 おかしいよ。知らないものまで出てきている。 そういえば、最初に受けた攻撃だって初めて見たスキル。 『……中々この魔王の左腕は面白いですね』 えっ……喋った、というか意識が……ある? 今まで戦ってきた偽物は、私が印象に残っている単語しか口にしなかったのに、このシャーちゃんはまるで本物……。 ――まままま、まさか本物!? 魔王くんとサーベルを交あわせているシャーちゃんに、恐々と話しかけてみた。 「あ、あの……シャーク……さん?」 『……何ですか? 邪魔するなら容赦しませんよ』 ――モ、モノホンだっ!
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