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腹の立つ音楽がギルドルームには流れている。
『よかったじゃねーかよ。俺様の言った通りだろ?』
拳を前に出し、ガッツポーズを決めるポルンは上機嫌だ。
自分の手柄を主張し始めたが、それを無視し哲二は話を先にすすめた。
「さっき連絡したミッションチケットを出してくれるかな」
『OK! 哲ちゃんの頼みだ。俺様は張り切ったぜっ!』
その無駄なハイテンションを止めてくれないかな。
そろそろ美咲が怒り出すのが分からないのだろうか?
学習しないトナカイだ。
『そうだ、現在塔にはニ組のチームが挑戦してるぜ。プレイヤーキラーの可能性は0じゃねーから気をつけなっ!』
Bランク以上のミッションから、プレイヤー同士の物理攻撃やスキル攻撃がヒットする事はもちろん仲間同士のスキルが当たるものも多い。
ましてや隔離された空間だ。襲われたら逃げるのも困難となる。
「アンタもたまにはいい仕事するじゃない。
そうね……150GPあげるわ」
『――マ、マジっすか!?』
画面の中でポルンはひっくり返る程驚いている。
美咲を鬼か何かと勘違いしているんじゃないか。
意外と……優しいんだぞ。
『い、いや。騙されないぜ。誰だお前は!
そういや、いつもより目がキツイし化粧も濃いぞ。
二の腕だっていつもよりぷよぷよしている!
だ、誰なんだお前はっ!』
「――な、なんですってっ!!」
ホント馬鹿なんだなコイツ。余計なこと言わなければ150GP貰えたのに。
「もう行くよー!」
ボックスからチケットを取り出した哲二は直ぐ様それを破った。
ポルンの相手をする時間など無いということだ。
『あぁ、待って、待ってくれっ! ミッションに行く前に150GPを……』
情けない声がだんだんと遠くなっていく。
馬鹿なトナカイを残して
――転送が、今始まる
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