女中と仲間

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「総司さーん!起きてくださーい!」 咲良が女中として壬生浪士組に居ることになって早一週間。 「そーうーじーさんっ!」 「んー…」 女中の仕事は寝起きの悪い沖田を起こすことから始まる。 「ん…さくらぁ?」 「はい!ほらもう皆起きてますよ?」 目をごしごしと擦る沖田は小さな子供の様だ。 「まだ眠たい……」 「駄目ですっ。起きて下さい!もう朝餉の用意も出来てますよ?」 「嫌だっ!」 沖田はそう叫び蒲団を抱き締めた。 そして気持ちの良さそうに、目を閉じる。 「はぁ…もう!」 咲良は無理矢理沖田を起こしあげ、蒲団を取り上げた。 「うわっ…咲良ひど」 「はいはい」 不貞腐れる沖田を横目に蒲団をしまい、早く広間に来てくださいよ、と告げ部屋を出た。 「よし、次は…」 沖田より更に寝起きの悪い、あのお方……。 「土方さーん!」 そう。鬼の副長、土方さん。 「……」 「起きてくださーいっ!」 幾ら叫んでもピクリともしない。 ふと文机を見ると、山積みになっている書類らしき紙と、無造作に置かれた筆があった。 きっと、また遅くまで仕事をしていたんだろう。 「大変なんだなぁ…」 土方は少なくとも咲良が来てから一週間、まともに寝ていない。 …でも。 「起きてくださーいっ!」 土方さんが居ないと、皆がご飯食べれないから、起こさないと。
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