女中と仲間

5/15
前へ
/153ページ
次へ
“悪魔の微笑み” “天使のような悪魔” そんな言葉がぴったりな沖田。 「はい…」 「いい子だねー」 よしよし、と咲良の頭を撫でる。 …子供扱いされてる? 「てかさー、総司過保護すぎだよ」 身をのりだしながら叫ぶ小さな男は、藤堂平助。 女子のような愛らしい容姿で、誰が見ても実年齢より五、六歳は幼く見えるだろう。 「五月蝿い」 「うわ、総司、酷い。なぁ左之、お前もそう思うよね?」 藤堂は隣に座っていた左之こと原田左之助に同意を求めた。 「あ?知らね」 「なんだよーっ」 ご飯を食べるのに必死な為、素っ気ない返事の原田に藤堂は肩を落とす。 「馬鹿へーすけー」 「馬鹿じゃない!総司の阿呆!」 「平助にだけは言われたくないよ。逆さから呼んだら助平のくせに」 「それはかなり本気で傷付くから止めて!」 …皆喧嘩や言い合いばっかり。 だけど、本当は凄く信頼しあっているのが、見ていてわかる。 お互い、心の底から信じあってるんだね。 だから冗談言ったり、からかったり、出来る。 …そういうのって、いいなぁ…。 “あの日”から人を心の底から信じられなくなった咲良は、羨ましくも、疎ましくも思う。 「咲良?」 笑っている筈なのに、何処か哀しそうな目をしている咲良を沖田は見つめる。 「あの、さ」 「はい?」 「咲良はさ………否、やっぱり何でもないや」 「?変なの」 クスクスと笑う咲良に、沖田の口元も自然と緩む。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

410人が本棚に入れています
本棚に追加