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「もう!やっぱり聞いてない」
頬を膨らまし唇を尖らせるのは彼女、浅原愛美が拗ねた時の癖。
「ごめんごめん。何って?」
「いいよ、大した話じゃないから」
いつもより少し低い声で告げる愛美に、咲良は苦笑いした。
「ごめんね」
「そんな謝らなくていいって。……あ、」
愛美のポケットの中の携帯がブルブルと震える。
それを手に取り、愛美は慣れた手付きで開いた。
「やった、ラッキー♪今日部活無しだ」
「そうなの?珍しいねぇ」
愛美はこの辺りでは強いと有名なバレーボール部に所属しており、放課後や休日は部活三昧だ。
「そだ、咲良は暇?買い物とか行かない?」
因みに咲良は一番楽な帰宅部。
「あ…、今日は行かなきゃならないとこあって」
「えー…っ」
先程より大きく頬を膨らます愛美。
「ほんとにごめんね。また今度」
「…約束だよ?それとお詫びにアイス奢ってね?」
「うん。約束」
咲良がそう言うと、愛美の頬はしゅるしゅると萎んでいった。
「絶対ね。まぁ次の休みはいつになるかわかんないけど」
「うん」
「じゃあ私他の人探してくるよ。また明日!」
そう言い残して走り去って行く愛美に手を振ると、愛美の方も大きく手を振り返してくる。
「…よし。行くかぁ」
愛美が見えなくなると同時に、小さな声で呟いた。
そして咲良は鞄を持ち、ゆっくりと教室を出た。
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