大切なお前

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‐中庭 ツナが云うように今日は良い天気で最高の散歩日和だ これなら楓の気も少しは晴れるだろう 俺達は近くのベンチに座り綺麗に咲くバラ達に目をやった 「このバラ園も昔から変わらないな」 「…昔から?」 楓は、俺の独り言に興味を示したように首を傾げて尋ね返してきた 「あぁ…よくこのバラ園で迷子になってな 親父やロマーリオに見つけて貰ったんだぜ」 あの頃の俺はまだ小さくて、このバラ園が大きく見えてた ヘナチョコで頼りなくていつも誰かに守られていて… 「あの頃は守られてばかりだったな…弱くて頼りなくて」 その時不意に楓が言葉を漏らした 「私は…今でも守られてばかり…私じゃ誰も守れない…」 これが初めて聞く楓の本音かも知れない 俺はただ黙って耳を傾けた
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