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黒のセーラー。それは間違いなく、僕が通う高校の制服である。胸元には白いリボンが花のように咲いていた。
それが彼女が纏う雰囲気を強調し、大和撫子と呼ぶに相応しい凛とした空気を醸し出している。
誰だっけ?
どうにも思い出せない。
僕は人の顔を記憶するのがどうも苦手なのだ。
それが美人だろうが、なんだろうが――…
相手が気づいてないのを良いことに、無遠慮にその顔を眺める。
彼女は遠目に見ても整っていることが分かる顔をしていた。
“まるでお人形のような”
という表現がぴったりと当てはまる。
でも、彼女に人形的な冷たさは感じない。
恐らく、瞳のせいだろう。つり上がり気味の瞳は不思議ときついとは感じず、どこか寂しげな印象を受けた。
それが人間味を帯びていて、寂しげなのに温かい。
風が彼女の長い黒髪を弄ぶ。
ふわりと靡く髪を手で押さえ、彼女が上を向いた。
悲しそうな顔。寂しげな瞳――…と、目が合う。
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