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「!?」
「やあ」
目一杯開かれた瞳。それに向かって、僕はひらひらと手を振る。
見開かれていた瞳は瞬時に鋭さを増し、僕を睨みつけてきた。
「覗きなんて悪趣味ね」
「覗くつもりなんてなかったんだけど……ね」
“君達が覗かれにやって来たんだよ”
その言葉を何とかのみ込む。
ここで機嫌を損ねたら、肝心な話を聞けなくなってしまうかもしれない。
愛想笑いと分かるであろう笑みを浮かべて、誤魔化す。
「大体、そんな所で何をしていたのよ?」
「昼寝、しようと思ってたんだけど――」
再び口をついて出そうになった言葉に、苦笑いを浮かべた。
あぁ、このまま行くと僕は本音を吐いてしまう気がする。
嘘をつく。という行為は苦手だ。
今度は何となく言いたい事が分かったんだろう。
彼女は、不機嫌そうにふいっと視線をそらした。
長い黒髪がその動作に靡くのを見ながら、僕はやっと彼女が誰なのかを思い出す。
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