1700人が本棚に入れています
本棚に追加
無理やり体を覚醒させたせいで、
「心臓バクバク……」
自室のベッドの上で、しばらく身動きが取れずに心拍が落ち着くのを待った。
何度か繰り返した深呼吸がため息になる頃、ようやくゆっくりと上体を起こす。
が、そのまま前のめりに頭を抱えた。
ばつが悪い気持ちで、手首と髪の毛の隙間から横目でチラリと枕元の時計を見やれば、時刻は午前三時を少し過ぎた所だった。
月明かりだけの濃紺の暗がりの中、気分は更に凹み、大きなため息が落ちる。
悪夢の顔をしていない悪夢の恐ろしさ。
しかも、目覚めても全てが記憶に残っている。
何度となく気持ちを引き締めて来て、今回は覚悟にすら近かったのに。
俺は彼女に仕える執事だと、腹を括った。
そう思った事で、自分の欲は全て心の奥底に沈めた。
だから最近は落ち着いていたんだ。お嬢様に向ける目も。
あの時も、そんな感情なしに自然に彼女の頬に触れられた。
でも結果こうなると、
「……全部そのつもりだっただけか」
最初のコメントを投稿しよう!