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しばらく走り、リムジンを海岸沿いの駐車場に停めた。
夏の気配が何処にも残らない、寒空と荒い波の音。
数ヶ月前に来た、あの海。
細く長く、弧を描いて続く砂浜に、ポツンと丸く座り込んで海原を見つめる背中を見付けた。
──居た……!
思わずハンドルに顔を埋め、不安だった胸を撫で下ろした。
そしてブランケットを片手に車を降り歩み寄った。
「風邪をひきますよ」
背後からの俺の声を聞いた途端に、彼女は両腕で抱えていた膝に顔を埋めた。
「……見つけるの早いよ」
海風に掻き消されそうなか細い声には絶望感すら滲んでいた。
その言葉には何も返さず、彼女の肩をくるむようにブランケットを掛けた。
そして隣に腰を下ろす。
「貴女に何も話さなかった事、申し訳ございませんでした」
何から話を切り出しても言い訳になる。
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