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確かに、顔を真っ赤にして履き物と奮闘する淑女って居ないもんね。
「じゃあお願いしようかな」
潔く諦めた方が綺麗だろう。
「はい。では、花緒の切れた左足はこちらへ」
京ちゃんに誘導され、左足を下駄に収める。
「それから右足は……失礼致します」
ちょっと考えた京ちゃんが、私の右足をスッと持ち上げた。
ちょちょちょちょっ!
内心驚くも、息を呑んで平静を装おう。
彼が私の足から履き物を脱がせ、新しく持ってきた別の物を履かせる。
なんだか、シンデレラになったみたい。
幼い頃読み耽ったストーリーにリンクするその光景に、ドキドキするのにうっとりもしているような、そんな気持ちで彼を見下ろす。
京ちゃんのサラサラの黒髪。
目線を落とした睫毛。
スッと通る鼻筋。
きゅっと閉じた唇。
一連の仕草。
そして、彼に似合う、燕尾服。
どれもこれもが絶妙にブレンドされて、京ちゃんから大人の色気が放たれる。
思わずこっちが変に照れる程に。
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