subconsciousの罠(仮)

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横になると、氷枕がひんやりと後頭部と首を包んだ。 その瞬間、子ども頃、熱を出せば何時も五月さんがそうしてくれていた記憶が、ふと蘇る。 「全く、男の子は意外に軟弱なんだから」 どうやら彼女も同じだったようで、あの頃と同じ事を懐かしそうな目をして呟きながら、俺の額に冷たいタオルを乗せた。 「朝食に玉子粥と果物持って来ますからね」 と五月さんは言って、部屋を出て行った。 ……母親って、あんな感じなのかな。 と、年甲斐もなく思ってしまう。 自分の両親の存在を知らないから、人から聞いた事と照らし合わせるしか方法はないのだけど。 大きくて、温かくて……。 確かに、五月さんは見た目も大きいけど。 「ははっ」 熱のせいか、そんな事でも一人で笑える。 普段なら、自分の親がどうなんて微塵も気にしない事なのに。 らしくない、久々に風邪なんて引いたから弱気になってるのかも。
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