subconsciousの罠(仮)

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ふう、と深く息をつき天井を見て思考を変える。 「しばらくお嬢様の所には行けないのか……」 夏風邪って確か、熱が昇降を繰り返して長引くよな。 目線を少しずらして見ると、壁の時計は午前七時を回っていた。 今日は誰がお嬢様の部屋に行ったんだろう。 彼女の一日の始まりで、俺の最初の日課。 窓辺に進みカーテンを開けて振り返れば、そこにはお嬢様がくしゃっとした髪のまま伸びをしていて。 あの瞬間は、特別優しい気持ちになれる。 “今日も一日、この人が幸せでありますように”と、願って止まない。 そうだ。熱が出ようと、知りもしない両親の事より、お嬢様の事を考えている方が 俺らしい。 「……行けないけど」 五月さんが言うように、移してはいけないし。 言われた通り大人しくしていよう。 早く治して、また彼女の隣に戻らないと……。 額のタオルは既にぬるい。 それを剥ぎ取り、再び朦朧としてきた意識の中、俺はゆっくりと目を閉じた。
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