隙を作らない

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……それが、お嬢様と俺のお互いのためだと、市川さんは話を締めた。 「……」 イギリスに執事の修行に行っていたとなれば、いよいよお嬢様は俺を執事としてしか見なくなる……と言う事だろうか。 成る程。 市川さんからすれば、先手を取った形だな。 でも、言われなくてもそんな事、もう十分に…… 「……分かっております。SPという仕事は、危険を回避し警護対象者の身の安全をコーディネートするのが本来の目的。危険より遠ければ遠いに越した事はありません」 「では……」 「承知致しました。九年間イギリスに行っていたと言う事で結構です。お嬢様に何か聞かれても、その様にお答えしましょう」 俺にとっても好都合だ。 その答えに、ようやく市川さんは肩の力を抜き、息を吐く。 そして、 「ありがとう、京介。……ではお嬢様の事、改めてお願い致します」 と、穏やかな目をして頬を弛ませた。  
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