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姿見の前に立ち、シュッと音を立て、シャツを纏う。
昨日までネクタイを絞めていた場所には、スカーフタイを付けて。
そして、今日から上に羽織るのは深いブラックの……燕尾服。
伝えておいたサイズ通りに仕立てられた服は、文句なしに俺の体にフィットした。
最後に、外した腕時計の代わりに、胸のポケットに懐中時計を入れれば。
「……出来た」
しかし失礼のない様、身に付け方に手落ちがないか、体を反転させ鏡で確認し、そして少し気になった襟元を整える。
「よし」
小さく気合いを入れ、素早く踵を返して部屋を出た。
今日からこの富士城家で、
俺は再び お嬢様付きの執事として、働く為に────。
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