プロローグ

7/7
前へ
/497ページ
次へ
姿見の前に立ち、シュッと音を立て、シャツを纏う。 昨日までネクタイを絞めていた場所には、スカーフタイを付けて。 そして、今日から上に羽織るのは深いブラックの……燕尾服。 伝えておいたサイズ通りに仕立てられた服は、文句なしに俺の体にフィットした。 最後に、外した腕時計の代わりに、胸のポケットに懐中時計を入れれば。 「……出来た」 しかし失礼のない様、身に付け方に手落ちがないか、体を反転させ鏡で確認し、そして少し気になった襟元を整える。 「よし」 小さく気合いを入れ、素早く踵を返して部屋を出た。 今日からこの富士城家で、 俺は再び お嬢様付きの執事として、働く為に────。  
/497ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1700人が本棚に入れています
本棚に追加