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田所は困ったように俺を見て、困ったように立ち竦んだ。
「いいよ、行けよ」
それでも俺を見ている田所に、笑いかけた。
「岬の、笑顔が好きなんだ」
困った顔が、見たいわけじゃない。
うつ向いて、鞄を持ち上げてから、田所は顔を上げた。
「行ってくる。ありがとうシノ!」
笑顔で手を振る田所を見送り、その姿が消えてから涙を拭った。
あいつなら、きっと大丈夫だ。あいつは強いから。俺みたいに、弱くないから。
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