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揺らめく炎の中で声が聞こえる。
明瞭で聞き慣れた声。
『眠り姫、よく聞きなさい』
声はどんどん遠ざかってゆく。
『お前はもう眠り姫でいてはいけない。これを被って逃げなさい!』
耐えられない程の臭いに鼻を切り落としたくなる。
濃密な異臭の漂う中、声の主は赤いずきんが放り投げた。
その赤は背景で揺れる炎より赤い。
それを宙で掴むのは眠り姫の兄、眠り王子。
血で染色されたような赤いずきんを握っていたが、やがてその手の力もつかの間。
糸が切れるように失われる。
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