001:偽りの赤ずきん

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揺らめく炎の中で声が聞こえる。 明瞭で聞き慣れた声。 『眠り姫、よく聞きなさい』 声はどんどん遠ざかってゆく。 『お前はもう眠り姫でいてはいけない。これを被って逃げなさい!』 耐えられない程の臭いに鼻を切り落としたくなる。 濃密な異臭の漂う中、声の主は赤いずきんが放り投げた。 その赤は背景で揺れる炎より赤い。 それを宙で掴むのは眠り姫の兄、眠り王子。 血で染色されたような赤いずきんを握っていたが、やがてその手の力もつかの間。 糸が切れるように失われる。
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