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「もっしもーし。そこのお嬢さん」
森の中間地点辺りで、赤ずきんは突然声をかけられた。
白いウサギである。
大きな懐中時計を持った、可愛らしいウサギ。
それでいて胡散臭そうなうさぎ。
起伏に富んだ口調で、
「お急ぎのようですが、どちらまで?」
と悪戯っぽい笑みを浮かべた。
露骨に嫌そうな顔をして、赤ずきんは返す。
「かっ…関係ないわ」
「うん?関係ないなんて…あなた、人付き合い苦手でしょう?」
「知らない女に平気で声をかけるあなたよりマシよ。さぁ、そこを通しなさい。私は急いでいるの」
「その勢いでアルプスの高峰を超えようとして凍死、といったところでしょうか?」
「……」
「ふむ…もしお菓子の国へ行きたいなら、一瞬で行ける方法がありますよ」
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