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僕は台の前に立った。
台の高さは僕よりも高く、前に立った状態だと水晶玉が台の角に隠れて見えなくなっている。
とりあえず、手を伸ばしてみるが水晶玉に指先が当たるのがせいぜいだった。
「はっはっは、アイリス、届かないか」
父のローガンが豪快に笑い、僕を抱きかかえてくれ、水晶玉に触れる距離になる。
「さぁ、手の平をつけてごらん」
ローガンは言い、僕は手の平を水晶玉に押し付けた。
途端、水晶玉が輝きだす。
僕は眩しさに目を瞑り、光が止むのを待った。
この水晶玉は魔力に反応し、床の魔法陣を使って聖霊界の王に自らの誕生を知らせるもので、この時に将来の使い魔が決定するそうだ。
しばらく輝き続けた後、水晶玉は次第に光を失い始め、ようやく光が無くなった。
僕は目を開けた。
手の平を離し、水晶玉を見る。
「おお……」
「まあ……」
ローガンと母・リリンが感嘆の声を上げ、絶句している。
水晶玉の中を帯電した風の渦があり、その中心の半分凍った水の小さな玉からは炎が上がっていた。そしてそれらを取り巻くようにして輝く光のリングと紫がかった黒のリングが回っている。
そうかと思えば全てが石となり砂になった後、影がかかったように黒くなり、草の芽が萌え出て、枯れて土に還る。
言ってしまえば、ありとあらゆる自然が水晶玉の中で表現されていた。
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