20568人が本棚に入れています
本棚に追加
次に「魔法」だ。神様の説明を鵜呑(うの)みにするならば、火とか風とかの属性が多岐にわたって存在するのだろう。その世界の魔法を知らない身としては、すべて使ってみたいなと考えてしまう。
あとは「魔力」か。魔法を使うに当たって、必要不可欠のもので認識はあっているのだろうか。だとすれば、無いよりは有った方が得だろう。上限が無い程にあれば、なおよい。
よし。その世界で、自分の意志とは関係なく死なないための願いは決まった。僕は願いを告げる。
「決まりました。いいですか?」
「ええ、どうぞ」
「一つ目は“底無しの魔力”。二つ目は“ありとあらゆる魔法を操る能力”。三つ目は“最強”――とかは、大丈夫ですかね……?」
言ってから、欲張りすぎたかもしれないと思った。
「願いに曖昧な部分があります。“あらゆる魔法”の定義と、“最強”の定義を決定してください」
僕の心配とは裏腹に、この願いに対して文句はないようだ。それどころか、神様は詳しく説明を求めてくる。
しかし、その定義が複数の場合、三つ以上の願いが叶うことになるのではないか。そんなことを思うも、僕は訊かれたことを答える。
「“あらゆる魔法”は、既存(きぞん)の魔法をすべて習得していることと、自分の思い描く魔法を作り出せる、です。“最強”は強靭な肉体に超人的な動体視力と、あらゆる戦闘方法を体得している、です」
自分で願っておいてなんだが、むちゃくちゃだと思う。けど、だ。もう一度死ぬようなことは避けたいし、「魔法使い」として有能であることは、右も左も分からぬ状況下では必須と言えるだろう。欲張っているとはいえ、納得はしてもらいたい。
――といっても、大した期待も無いのが実情だ。先ほどに一度願いを却下されているがため、やはり期待感というのは薄くなる。
神様がしばらくの沈黙の後、口を開いた。
「了解しました。では、貴方をその願いと共に転生させます。それでは行ってらっしゃい。よい生涯(しょうがい)を」
その瞬間、僕の意識は暗闇へと深く深く沈んで行った。
最初のコメントを投稿しよう!