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あの後、僕は貴族の中でも飛びっきりいい家柄の“長女”として産まれた。
それから五年後の今、僕は20畳はある自室の姿見の前に立っていた。
ぱっちりとした瞳の色は灰色。伸ばさせられているせいで腰まである長髪も灰色で、顔は幼児らしいあどけなさがある。
身長はまだ100センチもなく、服装は前世では縁の遠い高級な布で仕立てられた白のドレスだった。
「まさか女の子とは……。性別を選ばなかったからだろうな……」
だが時はすでに遅い。
僕は男だった記憶を残しながらも、“女の子”として育つのだろう。
複雑というか、どう転んでも同性愛者の枠からは出れそうにない。
これで婚約者決められた日には、この家を出て行く覚悟が必要になるだろう。
僕はため息をついた。
「お嬢様、準備は出来ましたか?」
僕の専属の女中が、木製の扉の向こうから声をかけてきた。
この日は、魔力や属性を調べる日だと以前に聞いた。
僕は前世、携帯小説で見たファンタジー小説のようで笑いそうになったが、こらえて女中のアヤに返事を返した。
「今行くよ、ちょっと待ってて!」
少し男っぽいこの口調は、最初は直させようとしていたが、今では諦められていた。
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