影に立つもの

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  丁度その時、詠唱を止めていた魔法使いの魔力が霧散した。  それを感じた僕は行動を起こす。  倒れた状態からすぐさま左足でブーツの男を両足を払い、右足に力を入れて身を起こして背に当てられていた手を掴んで引き寄せる。それからその男の胸ぐらも掴み、最後の3人目の男へと投げつけた。  そして、足を払われた落ち武者のようで薄汚れた男が起きあがろうとするので、男の側頭部を蹴りつけて飛ばし、重なり合って身動きのままならない2人へとぶつけた。  僕は杖を取り出し、男たちへと向けて大きな声で言う。 「たかだか3人でフェルナンド家長女を攫(さら)おうなど、片腹痛いわ!」  そして呪文を唱える。 「来たれ雷(いかずち)の精、幾重にも集いて敵を捕らえよ!」  と、その瞬間―― 「させるかあああ!」  隠れていた4人の仲間たちが、一斉に僕へと向けてナイフを投げてきた。  ナイフの飛んできた方向は4つとも背後の高草の茂みで、僕はあえてそこに背中を見せている。  僕は、その4人のうちの誰かの声に反応するがごとく振り返り、ナイフを軽やかに回避して杖を持っていない左手を茂みに向ける。そして呪文詠唱を完成させる。 「魔法の連弾・麻痺(まひ)する雷矢(らいや)!」  かざした左の手の平を中心に、敵へと向けて放射状にいくつもの電気を帯びた魔力弾が発射された。  魔力を多めに込めたために膨大な数となって発射された『麻痺する雷矢』は、少し離れた茂みへとすぐさま到達し、その一帯を蹂躙する。 「ぐあああああ!」 「のああああ!」 「うわああああ!」 「ぎゅあっ!」  4人の悲鳴が聞こえる。  蹂躙された高草の茂みの状態は変わり、土のむき出しになり大地がわずかにえぐれている。  そのなかにナイフを投げた4人の男が、帯状に形を変えた『麻痺する雷矢』にがんじがらめに縛られて、立ったまま地面に縫い付けられていた。
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