影に立つもの

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 転移した先は人通りの多い町の噴水のある広場。ここならば通報もしやすいだろう。  突然現れた僕に周りがざわついているが、そんなことを気にしている暇はないので、僕はすばやく近くにいつ町の住人である男性に尋ねる。 「この道の先で違法な奴隷商が出たんだ。自警団か何かに通報してくれないか? あいにくギルドが遠すぎて連行できないんだ」  そう言って、僕は西側の町の外へと続く大通りを指さす。  それを言われた男性は困惑の色を見せるが、僕がギルドカードを見せつけてもう一度催促をするとすぐさま近くの八百屋に駆け込んで行った。  それからすぐに戻ってきた男性は、僕に「通報しました」と報告をしてくれた。 「ありがとう、僕は戻って残党狩りをしてくるよ。転移」  その場を立ち去った僕が転移した先は、さっきの7人の奴隷商が眠っている場所だ。そこで人数が減っていないかを確認してから、僕は自分の屋敷へと向かった。  それほど時間をかけることなく屋敷に着いた僕は、静まりかえった屋敷の中からは見えないように半分がレンガ造りの柵に身を隠す。  学生鞄から携帯している手鏡を取り出し、手のひらサイズの鏡面に呪文をかける。 「鏡よ鏡よ鏡さん、アヤは何をしているのかしら」  すると鏡面に波紋が一度広がり、屋敷の中が映し出された。  アヤとハナは一緒に居た。場所は食堂と正反対の位置にある厨房で、2人して身を潜めている。片手にはそれぞれが木の杖を持ち、いつでも魔法を唱えられるようにしている。  その様子から、1階にある厨房に隠れていることから奴隷商が侵入したのはついさっきなのだろう。それを確認した僕は、迷わず正面玄関の扉を開けた。 「? なんだてめぇは!」  正面に居た体つきのいい男が大きな声をあげた。
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