舞台は原点へと向けて

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「降伏させればよろしいのですね?」 「この場合、それしかないと思いますが……」 「では、宣戦布告とともにラハール大公を拉致し、人質として降伏を呼び掛けるなんてどうでしょう?」  それでいいなら、どれだけいいか。もし国の主導権を握ろうとしている側近がラハール大公側に居たら、そのままラハール大公がいないことをいいことに好き勝手始めるかもしれない。それに加え、降伏にはラハール大公に対する忠誠心が強くなければならないだろう。  他人の心情に左右されやすい計画を実行するには、少し事が大きいような気がする。  だが、まあ、いい考えだとも思える。なにより死人がでなさそうでイイ。この路線で模索してみるか。 「……いいかもしれませんね。その線を突き詰めてみましょうか。どうですか? 陛下」  一応、国の政(まつりごと)の部分を含んでいる以上、国王陛下の意思がなくてはならない。ここで許可がほしいところだ。 「いいだろう。手段を選ばないことで死人が出ないならば、それに越したことはない」  マキャベリのようなことを言ってはいるが、その本質がソロモン王のようなものであればこうも気持ちのいい言葉になるのか。さすが大国の王と言わざるを得ない。清濁(せいだく)を織り交ぜてくる。  この日の夕刻まで、僕らは計画について話し合った。  ***  俺のラハールの護衛の任務は、エドの起こしたビルフォニア国王の誘拐のせいで延長となっていた。  これについては、『念話』で詳しく話を聞いているために、なんの不満もないのだが……。  玉座でふんぞり返っているラハールに跪(ひざまず)いている大地主から、ふいっと周囲へと視線を向けると、護衛兵も大臣も誰もかれもが視線を背ける。  ああ、帰りたい……。
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