第二章 3 背を向ける

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 遮るように言い、これ以上食い下がられないためにアヤの脇をすり抜けてダイニングへと向かう。その後を追ってきたアヤが何か言いたそうにしていると、ブラドとハナがダイニングへとやって来た。 「おはよう、ハナ、ブラド」 「おはようございます、お嬢様」 「おはよう、アイリス」  いつもと変わらない挨拶を交わし、席に着く。他愛ない会話を交わしながら朝食を摂り、ブラドを連れて学園へと向かう。寮を出たところで、隣のブラドが言った。 「なあ、アイリス」 「ん? なあに?」 「最近、様子がおかしくないか?」 「そんなことないよ。元気過ぎて、僕、テンション上がっちゃうわ」 「そうか?」  空は快晴だ。雲ひとつない。朝方であろうと、この時期の太陽光は熱い。今、僕の額には汗がにじんでいるに違いない。動悸(どうき)がするし、息切れ気味だ。これでは疲れていると言っているようなものか。ブラドには心配をかけたくないな。 「顔も赤いし……もしかして熱でもあるんじゃないか?」 「ない。ないない。太陽が熱いだけ」  ブラドが溜息をついた。突然、肩に手を置かれ、ぎょっとなる。 「ななに?」 「冷却魔法かけてやるから、じっとしてろ」 「お、おう」  ブラドの魔力が微量だけ解き放たれたことが、肩に置かれた掌越しに分かる。それに伴(ともな)って、火照っている体が冷えていく。  僕としたことが、冷却魔法(氷系魔法の応用)の存在をすっかりと失念していた。さすがに頭の回転が悪い。今日、授業を終えたなら、そのまま明日まで眠りこけることにしようかな。  ブラドが手を肩から離した。 「涼しくなったよ。ありがとう」  ブラドに顔を向けて感謝を述べる。そっぽを向いて鼻を掻いたブラドが「どういたしまして」と、ぼそりと呟いた。  僕はブラドの手の感触が残る肩を片手で摩(さす)りながら、ちらちらと僕の様子を確認してくるブラドの話しを聞く。 「呼吸が不規則な上、魔力の流れも乱れてる。目も充血気味だし、隈(くま)も出来てる。明らかに寝てないだろ?」 「え……まさか、手を置いた時に探知した?」 「……ああ」  言いづらそうに、ブラドは肯定する。
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