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眞人はプリントを受け取って、自分の席へと着いた。みんな悪気があるわけじゃないんだ。眞人は自分に言い聞かせる。ふと、配られたプリントを見ると、『入部届』と太字で書かれていた。
今、このクラスでは、どの部活に入ろうかという話題で持ちきりだった。みんな、どこかで貰ったのか、様々な部活、同好会の勧誘のチラシを楽しそうに眺めていた。
そんな中、眞人は一人、この高校には、どんな部活があるのかさえも分からないのだった。勧誘のチラシは手元に一枚も持っていなかった。貰おうとはした。しかし、貰えなかったのだ。まるで、みんなが眞人のことを避けているのかと思うくらい。眞人が貰おうとわざとらしく、勧誘の人の目の前を行ったり来たりしてみても、渡しては貰えなかった。それでもあまり気にはしなかった。もう馴れていた。よく駅前にいるティッシュ配りの人からだって、ティッシュを貰ったことがないのだから。だから、自分が嫌われているとか、避けられているとか! そんなこととは全く別の次元の問題なのだ。何より、まともに誰かと話したことすらないのだ。嫌われる、避けられる以前の問題なのだ。そう眞人はいつも自分に言い聞かせていた。といっても言い聞かせて、終わりなのだが。
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