第一章

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 例え、みんなから意図的に避けられているのだとしても、自分の何が原因なのかなんて考えようもない。なので、眞人自身、ほとんど諦めかけていた。いつしか、そういうものなのだと、当たり前のように思うようになっていた。  清掃も終わり、下校時刻になると、一人荷物を整理して、教室を出る。一緒に帰る友達もいない為、特に何かすることもなく、真っ直ぐ家へと向かおうと思った。ふと、どこかの部活を覗いていこうかとも思ったが、特にやりたいことも、興味があることも思い浮かばないので、やっぱり家に帰ることにした。しかし、頭のどこかで警告音が発した。何故だか自分はどこかの部活に入らなければならなかった。でも、その理由はすっかり闇の中に紛れていて思い出すことは叶わなかった。それを思い出そうとする意思よりも家に帰りたいという願望の方が勝っていた。だから、結局何もしないで家に帰ろうという結論に至る。そんな、もやもやした気持ちを抱えながら、学校の正面玄関で、上履きから靴に履き替え、外に出ると、大きな声が響いてきた。誰かが拡声器を使って、何かを言っている。甲高い女性の声だった。何となくその声がどこから聞こえているのか気になった。探そうと辺りを見回すが、その時には何も聞こえなかった。その代わりに風紀委員と書かれた腕章を付けた生徒が慌ただしく、校庭を走り回っているのを見かけた。野球部のユニフォームを着た生徒達は練習を中断し、何事かとそわそわしているようだった。風紀委員の人達は、明らかに誰かを追いかけている様子だった。そうすると、恐らく拡声器の声の主を追いかけているんだと思った。  何やら、面白いことをしているのかも。もちろん、それは悪いことで。少し興味が湧くが、面倒事にわざわざ自分から巻き込まれに行くのも嫌だった。もしかしたら、自分まで先生に怒られるかもしれないし。  ここは知らない顔をして、早々に立ち去ることに決めた。それにしても、さっきの拡声器の声、どこかで聞いたことがあるような気がした。
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