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それにしても、やっぱり、あの拡声器の声は、竜胆っていう人のだったんだ。眞人の胸騒ぎは的中していた。あの時、真っ直ぐに帰っていなければ、もう少しでその噂の人と出くわしていたのかもしれなかったのだ。少し惜しいことをしたのかもしれない。どれほどの美人でどれほどの変人なのかを一目見ておきたかったような気もした。どうしてそんなに有名になれるのかも知りたい。自分とはまさにある意味での雲泥の差だった。それほど大きな存在感を他者に示すことはそれだけで凄いと、眞人は思う。いや、自分がそうなりたいと思うこととは、また別の話ではあるが。もし、この噂が全て自分に対するものだったらと思うとぞっとする。きっと、自分なら、もうこの学校には来られなくなるだろう。
しばらくクラスは騒々しかったが、先生が入ってきた途端に、それは足並みを揃えたかのようにぴしゃりと静まった。こんな時のみんなの団結力って凄いなと眞人は感心する。
先生は、昨日の生徒が屋上から飛び降りた事件など、何も無かったかのように、平然と今日の日程を話していた。それは本当に軽やかなもので、生徒がふざけ半分にそれらしい話題を先生に振ろうとしても「昨日は何も無かった」と言わんばかりに華麗にスルーしてしまうのだった。
これが大人のスルー力か。とても勉強になった。
そんなことを思っていると、不意にとても重大なことを告げられた。
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