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「昨日配った入部届、書けた人から早く出すように。念の為に言っておくけど、うちの高校は、校長先生の考えで、部活の参加は強制だ。みんな何かしらは書いて出すように。どうしても決まらないのなら、私のところのラグビー部に入りなさい。たくさん鍛えてあげるから。女子ならマネージャーだな」
ほおら、だから言っただろ。昨日、頭のどこかで鳴った警告音が、そう言った。絶望的だった。目の前が真っ暗になって、どこまでも沈んでいきそうだった。
「何度も言うように期限は来週の金曜日までだ」
さらに追い打ちをかけてくるかの如く、それは眞人の胸に突き刺さった。
「どうしよう。すっかり忘れてた!」思わず、声を漏らす。その悲痛な嘆きは誰にも聞こえることはないのだった。
そう言えば、そうだ。どうして自分は今の今まで忘れていた。部活の参加は強制だと。それを聞いたのは、入学して間もない頃だった。いや、昨日も確かに言っていた。自分が窓を眺めるのに夢中になって聞いていなかっただけだった。きっと中学の頃から部活動には縁がなかったせいだ。部活の強制だなんて、どこか遠い国のお伽話のように思っていた。
もうクラスの大半は入る部活が決まっているらしく、次々と入部届を提出していた。その光景はさらに眞人を焦らせた。
よし、今日は部活を探そう。まずはそこからだった。ラグビー部だけは死んでも嫌だった。試合の度に骨折する、そんなバイオレンスなスポーツだと、どこかで聞いていた。
提出期限まで、あと八日だった。
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