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「どういうことだ!」
ああ、どういうことなんだ。こっちが聞きたい。しばらく見ないうちにこの掲示板に一体何があったというんだ。明らかに穏やかじゃない。まるで掲示板全体が脅迫文になっているかのようだった。お前はラグビー部に入れと、掲示板にそう言われているような気がした。
「あんな危険まで冒して、何も収穫無し?」
「だって、しょうがないでしょ。本当に何も無かったんだから。あれだけ、怪しい頭をしていた教頭が悪いのよ。あったのは、輝かんばかりの肌色だけだったわ」
「それは、ご愁傷様だ……。とにかくそれをどこかに隠すんだ。そんな堂々と持ち歩いていたら我々が捕まってしまう!」
「分かってるわよ」
眞人が絶望に打ちひしがれていると、誰かに頭を鷲づかみにされた。何だと思って眞人は振り返るが、もうそこには誰もいなかった。
近くで話し声は聞こえた気がするが気のせいだったのかな。
はぁ、と深く溜息を付くと、眞人は肩を落としながらトイレに向かった。自分はきっと疲れている。疲れているから、掲示板に変な数式がたくさん見えるんだ。
そう思いながら、トイレの洗い場でじゃばじゃばと顔を洗う。鞄に入れておいたタオルで顔を拭うと、鏡を見た。そこには髪の長いやつれた顔をした女の人が立っていた。やっぱり自分は疲れている。
「何で、僕、髪が長くなっているの?」
それは疲れているからだと思った。
トイレから出ると、また忙しそうな風紀委員達がいた。風紀委員は、近くを通った男子生徒の一人を呼び止め、聞き込みをしているところだった。
「すみません。この辺りで、カツラを見ませんでしたか?」
「えっ、カツラ? 誰の?」
「いや、すごく言い難いんですけど……」
「もしかして、教頭?」
「しっ、声が大きいですってば!」
男子生徒は笑いを必死に堪えながら言った。
「分からないなぁ」
「そうですか。ご協力ありがとうございました」
教頭先生のカツラが盗まれたんだ。それは確かに大変だ。でも一体何の為だろう?
風紀委員は急ぎ足で眞人の横を通りすぎていった。その時の風圧で、頭の上の何かがふわっと持ち上がる。
黒い毛むくじゃらのそれが足元に落ちてきた……
「なんで、僕のところに……」
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